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中小M&A資格試験と事業承継・M&Aエキスパートの違い|公的色の強い新試験と民間資格を比較

中小M&A資格試験と事業承継・M&Aエキスパートの違いを比較。経済産業省(中小企業庁)が現在準備している中小M&A資格試験と、既存の民間資格である事業承継・M&Aエキスパートの位置づけ・対象者・需要を解説します。

中小M&A資格試験と事業承継・M&Aエキスパートの違い|公的色の強い新試験と民間資格を比較

中小M&A資格試験と事業承継・M&Aエキスパートは何が違う?

中小M&Aに関する資格として、以前から知られているものに「事業承継・M&Aエキスパート」があります。 一方で、今後新たに注目されるのが「中小M&A資格試験」です。

どちらも事業承継や中小企業M&Aに関する知識を扱う資格ですが、両者の位置づけは同じではありません。 事業承継・M&Aエキスパートは、一般社団法人金融財政事情研究会が認定する既存の民間資格です。 これに対して、中小M&A資格試験は、経済産業省(中小企業庁)が現在準備を進めている、新たな中小M&A関連の国の資格試験です。

この記事では、中小M&A資格試験と事業承継・M&Aエキスパートの違いを、位置づけ・対象者・試験形式・需要の観点から整理します。

まず結論:既存資格としての実績と、新試験としての制度的な位置づけが違う

事業承継・M&Aエキスパートは、既に試験制度が運用されている民間資格です。 金融機関、士業、M&A支援者などが、事業承継や中小企業M&Aの基礎知識を確認する資格として利用しやすいものです。

一方で、中小M&A資格試験は、経済産業省・中小企業庁の政策文脈の中で創設準備が進む新しい試験です。 中小M&A支援の質の向上や、倫理・行動規範の徹底といった政策目的と結びついている点に特徴があります。

そのため、両者は単純な優劣ではなく、役割の違いで整理すると理解しやすくなります。 事業承継・M&Aエキスパートは「今すぐ受験できる既存の民間資格」、中小M&A資格試験は「今後の制度運用が注目される新しい資格試験」と見るとよいでしょう。

事業承継・M&Aエキスパートとは

事業承継・M&Aエキスパートは、一般社団法人金融財政事情研究会が認定する民間資格です。 金融財政事情研究会が提供する「事業承継・M&A 資格認定・支援制度」の中に位置づけられています。

関連する試験は、「金融業務2級 事業承継・M&Aコース」です。 金融財政事情研究会の種目別ガイドでは、対象者として金融機関の渉外・融資担当者、公認会計士、税理士等が想定されています。 ただし、受験資格は特に設けられていないため、事業承継や中小企業M&Aの基礎を学びたい人にも受験しやすい資格です。

CBT-Solutionsの試験案内では、この試験の目的について、中堅・中小企業の事業承継をめぐる基本的な知識の検証と、増えつつある中小企業M&Aへの理解度を測ることと説明されています。 合格者には「事業承継・M&Aエキスパート」の認定証が発行され、上位講座の受講資格にもつながります。

事業承継・M&Aエキスパートの試験概要

事業承継・M&Aエキスパートは、既に制度が運用されているため、試験概要が明確です。 金融業務2級 事業承継・M&Aコースは通年実施のCBT試験で、受験者が予約した日時・テストセンターで受験する形式です。

項目 内容
関連試験 金融業務2級 事業承継・M&Aコース
実施方式 CBT方式
試験時間 120分
出題形式 四答択一式30問、総合問題10題
合格基準 100点満点で70点以上
受験手数料 7,700円(税込)
主な試験範囲 事業承継関連税制、事業承継関連法制、M&A基礎知識・関連会計、M&A関連法制、総合問題

この資格の強みは、すでに運用実績があることです。 受験方法、試験範囲、合格基準が明確で、学習を始めやすい点は大きなメリットです。

ただし、資格の性格としては、事業承継・中小企業M&Aに関する基礎知識を確認する民間資格です。 この資格だけでM&A実務能力を完全に証明できるわけではありません。 実際のM&A支援では、財務・税務・法務・交渉・倫理判断など、幅広い実務能力が求められます。

中小M&A資格試験とは

中小M&A資格試験は、経済産業省の外局である中小企業庁が実施準備を進める、新たな中小M&A関連の資格試験です。 中小企業庁は、令和7年度補正中小企業活性化・事業承継総合緊急支援事業の一環として、「中小M&A資格試験実施事業」の実施機関を公募しています。

つまり、中小M&A資格試験は、民間団体が独自に設ける資格とは異なり、経済産業省・中小企業庁の政策文脈の中で創設準備が進む新しい資格試験です。

ここが、事業承継・M&Aエキスパートとの大きな違いです。 事業承継・M&Aエキスパートは既に運用されている民間資格であるのに対し、中小M&A資格試験は、中小M&A支援の質の向上や倫理・行動規範の徹底といった政策目的と結びついた試験として設計される可能性があります。

中小M&Aの現場では、単なる知識だけでなく、利益相反、手数料、情報開示、説明責任、譲渡側・譲受側への適切な対応など、実務上の判断が問われます。 中小M&A資格試験が、こうした倫理・行動規範まで含めて整備されるのであれば、既存の民間資格とは異なる意味を持つ試験になる可能性があります。

比較表|中小M&A資格試験と事業承継・M&Aエキスパートの違い

比較項目 中小M&A資格試験 事業承継・M&Aエキスパート 見方
制度上の位置づけ 経済産業省・中小企業庁の政策文脈で創設準備が進む新たな中小M&A関連資格試験 一般社団法人金融財政事情研究会が認定する既存の民間資格 公的色の強さでは中小M&A資格試験に注目。既存の運用実績では事業承継・M&Aエキスパートが先行。
主な価値 中小M&A支援の質、倫理・行動規範、今後の制度運用との関係が期待される 事業承継・中小企業M&Aの基礎知識を示しやすい 短期的には既存資格の使いやすさ、将来的には中小M&A資格試験の制度上の位置づけに注目。
対象者 M&A仲介会社、FA、M&A支援機関、金融機関、士業など、中小M&A支援に関わる人材 金融機関の渉外・融資担当者、公認会計士、税理士など 対象者は重なるが、中小M&A資格試験はより中小M&A支援者全体を意識した試験になる可能性。
試験形式 CBT形式、120分、60問程度が想定 CBT方式。金融業務2級 事業承継・M&Aコースは120分、四答択一式30問・総合問題10題 どちらもCBT形式。ただし、中小M&A資格試験は制度目的や倫理・行動規範との関係が重要。
学習範囲 M&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範の4科目が想定 事業承継関連税制、事業承継関連法制、M&A基礎知識・関連会計、M&A関連法制など 中小M&A資格試験では、倫理・行動規範が大きな差別化要素になる可能性。
需要の見方 今後形成される段階。制度運用次第で需要が伸びる可能性 既に金融機関・士業・M&A支援者の基礎資格として一定の認知あり 今の認知度は既存資格、将来性は中小M&A資格試験に注目。

中小M&A資格試験は国家資格なのか?

中小M&A資格試験については、「国家資格なのか」「国が作る資格なのか」が気になる人も多いはずです。 現時点で確認できる一次情報では、中小M&A資格試験は中小企業庁の委託事業として実施準備が進む新しい試験です。

法律上の国家資格として明記されているものと断定するよりも、経済産業省・中小企業庁の政策文脈で創設準備が進む、公的色の強い新しい中小M&A関連資格試験と理解するのが正確です。

ただし、民間団体が独自に設ける資格とは明らかに位置づけが異なります。 中小M&A支援の質の向上や、倫理・行動規範の徹底という制度目的と結びついている点は、今後の中小M&A支援者にとって重要な意味を持つ可能性があります。

需要があるのはどちらか

現時点での認知度や取得者の広がりという意味では、事業承継・M&Aエキスパートの方が先行しています。 金融業務2級 事業承継・M&Aコースは通年実施のCBT試験として運用されており、対象者として金融機関の渉外・融資担当者、公認会計士、税理士などが明記されています。 つまり、既に実務周辺で使われている民間資格としての土台があります。

一方で、中小M&A資格試験は、これから需要が形成されていく試験です。 ただし、需要が未確定だから弱いというより、今後の制度運用によって評価が大きく変わる可能性があります。 中小企業庁が中小M&A資格試験実施事業を進めていることからも、中小M&A支援人材の知識・倫理面を整備しようとする流れが読み取れます。

特に、M&A仲介会社、FA、金融機関、士業、支援機関など、中小M&A支援に関わる人にとっては、今後の制度動向を確認しておく価値があります。 中小M&A資格試験は、単なる資格取得ニーズというよりも、中小M&A支援者として確認すべき知識・倫理の共通基盤として注目される可能性があります。

どちらを受けるべきか

どちらを受けるべきかは、目的によって変わります。 事業承継や中小企業M&Aの基礎知識を早めに整理したい場合、事業承継・M&Aエキスパートは現実的な選択肢です。 既に制度が運用されており、受験方法、試験範囲、合格基準も明確です。

一方で、今後の中小M&A支援に本格的に関わる人は、中小M&A資格試験の動向も確認しておく必要があります。 経済産業省・中小企業庁の政策文脈で創設準備が進む試験であり、今後の制度運用や支援者に求められる知識・倫理の基準と結びつく可能性があるためです。

整理すると、事業承継・M&Aエキスパートは「今すぐ取れる既存の基礎資格」、中小M&A資格試験は「今後の中小M&A支援の制度対応を見据えた新資格」と考えると理解しやすいでしょう。 既存資格としての便利さでは事業承継・M&Aエキスパートに分がありますが、今後の制度上の意味では中小M&A資格試験にも注目しておく必要があります。

なぜ中小M&A資格試験が注目されるのか

中小M&A資格試験が注目される理由は、単に新しい資格だからではありません。 中小M&A支援の現場では、知識だけでなく、支援者の姿勢や倫理観が問われる場面が多いからです。

たとえば、譲渡側・譲受側の双方に関わる場合の利益相反、手数料体系の説明、情報開示、経営者への説明責任、支援機関としての適切な関与など、中小M&Aには慎重な判断が求められる論点が多くあります。 こうした論点は、単にM&A用語を覚えるだけでは対応できません。

中小M&A資格試験が、M&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範の4科目を横断して問う試験として整備されるのであれば、中小M&A支援者にとって、より実務に近い形で知識と判断力を確認する機会になる可能性があります。

その意味で、中小M&A資格試験は、単なる資格取得のための試験ではなく、中小M&A支援者としての基礎的な共通言語を確認する試験になる可能性があります。 この点は、既存の民間資格との大きな違いです。

中小M&A資格試験対策では何を学ぶべきか

中小M&A資格試験を見据える場合、まずはM&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範の4科目をバランスよく確認する必要があります。 既存のM&A資格と比較しても、倫理・行動規範が大きなポイントになる可能性があります。

特に、倫理・行動規範は、単なる暗記だけでは対応しにくい分野です。 実務上どのような対応が不適切なのか、利益相反や説明責任の場面でどのような判断が必要なのかを意識しながら学習する必要があります。

また、CBT形式や選択式の問題が想定されているため、画面上で問題文を読み、選択肢を比較して判断する練習も重要です。 知識を覚えるだけでなく、「どの選択肢がなぜ不適切なのか」を考えながら演習することが、中小M&A資格試験対策では重要になります。

中小M&A資格試験に向けて、今から準備できること

中小M&A資格試験の詳細は今後更新される可能性があります。 ただ、現時点で公表されている情報から見ると、M&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範などを幅広く確認しておくことが重要になりそうです。

特に、倫理・行動規範は、単なる知識の暗記だけではなく、実務上どのような対応が不適切なのかを判断する力が求められる分野です。 中小M&A支援に関わる人は、制度の最新情報を追いながら、基本論点を少しずつ整理しておくとよいでしょう。

また、CBT形式や選択式の問題に慣れておくことも大切です。 画面上で問題文を読み、選択肢を比較しながら判断する練習を積んでおくことで、本番形式にも対応しやすくなります。

中小M&A資格試験に向けた学習では、まとまった時間だけでなく、日々のスキマ時間を使って重要論点を確認することも有効です。 一問一答で基本論点を確認し、分野別に理解度を見ながら、間違えた問題を復習する流れを作っておくと、学習を継続しやすくなります。

本サイトでは、中小M&A資格試験の学習を進めやすくするためのアプリ機能も紹介しています。 一問一答、分野別の進捗確認、模試形式の演習、間違いノートなど、アプリでできることは以下の記事で詳しく解説しています。

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まとめ

事業承継・M&Aエキスパートは、一般社団法人金融財政事情研究会が認定する既存の民間資格です。 金融機関、士業、M&A支援者などが、事業承継や中小企業M&Aの基礎知識を確認する資格として利用しやすいものです。

一方で、中小M&A資格試験は、経済産業省の外局である中小企業庁が実施準備を進める、新しい中小M&A関連の資格試験です。 既存の民間資格とは異なり、中小M&A支援の質向上や倫理・行動規範の徹底といった政策文脈と結びついている点が特徴です。

両者は、単純な優劣ではなく、位置づけの違いで理解するのが自然です。 事業承継・M&Aエキスパートは既に運用されている民間資格として、中小M&A資格試験は今後の制度運用が注目される新試験として、それぞれの特徴を整理しておくとよいでしょう。

中小M&A支援に関わる人は、既存資格の活用可能性を理解しつつ、中小M&A資格試験の最新情報も継続して確認しておくことが大切です。

参考情報

この記事を書いた人

中小M&A資格対策 編集部

中小M&A資格試験の受験予定者に向けて、公開資料をもとに試験情報、学習方法、科目別の重要論点を整理しています。