仕訳とは何か
仕訳とは、日々の取引を「勘定科目」と「金額」で左右に振り分けて記録することです。左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と呼び、1つの取引を必ず左右セットで記録します。左右の合計金額は常に一致します。
例:商品80,000円を現金で仕入れた
(借方)仕入 80,000 /(貸方)現金 80,000
「仕入という費用が発生した」ことを借方に、「現金という資産が減った」ことを貸方に記録しています。このように、1つの取引を2つの側面から記録するしくみを複式簿記と呼びます。
簿記試験で仕訳が重要な理由
仕訳の重要性は、級が変わっても変わりません。帳簿記入も決算書類の作成も、正しい仕訳ができることが前提になるためです。ここでは入り口になる簿記3級を例に、配点の比重を確認します。近年の日商簿記3級は、試験時間60分・100点満点・70点以上で合格という形式で、統一試験(ペーパー)とネット試験(CBT)が同じ構成で実施されています。出題は次の3問構成です。
| 大問 | 出題内容 | 配点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 仕訳問題 15題 | 45点 |
| 第2問 | 帳簿・勘定記入、補助簿など | 20点 |
| 第3問 | 決算書類(精算表・財務諸表など)の作成 | 35点 |
第1問の仕訳だけで45点と、合格点70点の6割以上を占めます。さらに、第2問の帳簿記入も第3問の決算書類作成も、正しい仕訳ができることが前提です。仕訳の正確さとスピードが、試験全体の得点を左右します。
最新の試験概要(申込方法・日程・出題区分)は、商工会議所の検定公式サイトで確認してください。
仕訳問題を解く7ステップ
仕訳問題では、いきなり借方と貸方を決めるのではなく、取引の内容を順番に整理します。次の7段階で考えると、どこで判断を間違えたかも確認しやすくなります。
1取引を読む
問題文で何が起きたかを確認する
2登場するものを分ける
増えたもの、減ったもの、発生したものを抜き出す
3勘定科目を選ぶ
取引内容を表す科目名に置き換える
45要素に分類する
資産・負債・純資産・収益・費用のどれかを確認する
5増加・減少を判断する
各勘定科目が増えたか減ったかを考える
6借方・貸方へ置く
5要素の増減ルールに当てはめる
7金額と貸借一致を確認する
金額を記入し、借方合計と貸方合計が一致するか確かめる
現金や普通預金が登場する問題では、その増減から考えると片側を早く決められる場合があります。ただし、現金が登場しない取引もあるため、最終的には各科目の5要素と増減から判断してください。ステップ4〜6の増減ルールは借方・貸方とはで図解しています。
例:商品を現金で仕入れた場合
7ステップを、実際の取引に当てはめて確認します。完成した仕訳だけでなく、仕入と現金をどのように分類したかに注目してください。
取引
商品80,000円を現金で仕入れた
取引に登場するもの
商品の仕入れが発生した/現金が減った
勘定科目
仕入・現金
5要素
仕入:費用/現金:資産
増減
仕入:費用の発生/現金:資産の減少
配置
費用の発生は借方/資産の減少は貸方
借方(左)
仕入 80,000円
貸方(右)
現金 80,000円
確認:借方80,000円=貸方80,000円
この例では、仕入という費用が発生し、現金という資産が減少しています。同じ資産でも、増加なら借方、減少なら貸方になる点を確認してください。
簿記3級の頻出仕訳パターン
3級で繰り返し出題されやすい論点は、おおむね次のとおりです。いずれも2級以降の応用論点の土台になる基本の型なので、まずはこの表の取引を見た瞬間に仕訳が浮かぶ状態を目指しましょう。2級で加わる論点は簿記2級の仕訳対策で整理しています。
| 論点 | 取引の例 | 仕訳の型 |
|---|---|---|
| 商品売買 | 掛け仕入・掛け売上、返品 | 仕入/買掛金、売掛金/売上 |
| 現金・預金 | 預け入れ、引き出し、小口現金 | 普通預金/現金 など |
| 債権・債務 | 売掛金の回収、買掛金の支払い | 現金/売掛金、買掛金/現金 |
| 手形・電子記録債権 | 約束手形の振り出し・受け取り | 仕入/支払手形 など |
| 固定資産 | 備品・建物の購入、減価償却 | 備品/未払金、減価償却費/減価償却累計額 |
| 経費の支払い | 家賃・水道光熱費・通信費 | 支払家賃/普通預金 など |
| 給料と預り金 | 源泉所得税を差し引いた給料支払い | 給料/預り金・普通預金 |
| 貸付・借入 | 貸付金・借入金と利息 | 貸付金/現金、現金/借入金 |
| 決算整理 | 貸倒引当金、経過勘定(前払・未払) | 貸倒引当金繰入/貸倒引当金 など |
例題で確認する
例題1:商品を120,000円で販売し、代金は翌月末に受け取ることにした。
答え:(借方)売掛金 120,000 /(貸方)売上 120,000
後日受け取る販売代金は売掛金(資産の増加=借方)で処理します。
例題2:事務所の家賃90,000円を普通預金から支払った。
答え:(借方)支払家賃 90,000 /(貸方)普通預金 90,000
費用の発生は借方、資産の減少は貸方です。
より多くの例題は簿記3級の仕訳例題10選で解説付きで練習できます。
仕訳が苦手になる3つの原因
原因1:借方・貸方の位置があいまい
資産・費用は増えたら借方、負債・純資産・収益は増えたら貸方という定位置を覚えないまま問題を解くと、毎回迷うことになります。定位置の考え方は借方・貸方とはで詳しく解説しています。
原因2:勘定科目を選び間違える
売掛金と未収入金、買掛金と未払金のように、似た科目の使い分けがあいまいだと失点につながります。使い分けの基準は勘定科目の覚え方で整理しています。
原因3:練習量が足りない
仕訳は「理解した」と「解ける」の間に差がある分野です。テキストを読んで分かったつもりでも、問題を前にすると手が止まるのは練習不足のサインです。1日数問でも毎日解くことで、型が定着していきます。復習を含めた学習の回し方は仕訳の勉強のコツで解説しています。
効率的な練習のしかた
仕訳は1問1分前後で解けるため、通勤・通学などのスキマ時間での反復に向いています。本アプリ「仕訳力ドリル」は、日商簿記3級・2級の仕訳問題に絞って、論点別トレーニングと間違えた問題の自動復習ができます。App Store・Google Playで配信中です。まずは上の7ステップを使って、毎日の習慣づくりからはじめてください。